2017-07-01から1ヶ月間の記事一覧
要するに、俺を拾って助けてくれたこの男は『アイドルオタク』という分野の人類らしい。 その昔、労働することはおろか、人とのコミュニケーションや、外出すら拒絶していたような時期があったらしい。 しかしこの『みかりん』というアイドルに出会い、人生…
この世界は光を欲し過ぎている。 より強く輝くため、激しい光を放つため、そしてその光を皆が享受できるように、そうやって世の中の仕組みが構築され回るようになっている。 だが光ばかり見ている連中はすっかり忘れちまったんだろう。 光が在るところには必…
駐車場の街灯から降る弱い光が、薄ぼんやりとした大小ふたつの影を作っている。 大きな方の影が、何度目かのため息をつく。 それにつられて小さいほうの影も、深いため息をついた。 「俺は、撮影されてた過去のステージは、資料の映像ディスクで観てたんだ。…
「チッ・・・こんなガキに見られちまうたぁ、俺もヤキが回ったな」 今は誰も寄り付かない廃工場。 その中で、誰にも言わず秘密で犬を飼っていた。 家族に見つからないように食べ物を持ち出すのは苦労したし、有刺鉄線をくぐってこの廃工場に入るのも楽では無…
「俺もって、どゆこと・・・?」 初華はキョトンとして御徒町を見詰めた。 その御徒町は深いため息をつき、少し間を置いてから、初華に重大な報告をした。 「まさか初華からソレを言われるとは思わなかったよ。驚いた。俺から言おうと思ってたのに」 ハハハ…
今日は体幹トレーニングと、先輩アイドルのステージ見学の予定だ。 ウィーカは駐車場で、御徒町の会議終了を待っていた。 「ごめんごめん、お待たせ。ちょっと長引いちゃって」 早歩きでやってきた御徒町だが、車のロックを解除する様子が無い。 ウィーカは…
約束の時間より、ずいぶん早く事務所に到着しそうなウィーカは、ひとり街をブラつくことにした。 まだ午前9時頃ということもあり、開店前の店も多い。 当てもなく歩くウィーカ。 どこかのコーヒーショップにでも入って時間を潰そうかと考えていると、ふいに…
ウィーカが歌唱レッスンを受けているあいだ、御徒町は車内で雑務を片付けていた。 今はまだウィーカひとり、しかもデビューもしていない研究生(補欠)の世話だけなのだが、それでもやることは多かった。 レッスン場の確保、それに合わせたスケジュール調整、…
「お父ちゃんがな、商売人やってん」 御徒町は、まるで独白のようなウィーカの言葉に耳を傾けた。 車の速度を落とし、意図的にゆっくり走る。 「ウチな、履歴書には『経済特区出身』て書いてたやろ?ホンマはちゃうねん」 御徒町は少なからず驚いた。 ウィー…
首から下げた名札と、スーツに輝く社章。 この2つのアイテムを、今この時ほど有り難いと思ったことは無かった。 女子シャワー室の出入口付近でオロオロとしている御徒町。 一歩間違えれば完全に不審者である。 「なんでこんな時に限って誰も居ないんだ・・…
ドサッ。 「ゼェ・・・ゼェ・・・」 全身を汗でびっしょり濡らしたウィーカは、ダンススタジオのフロアに倒れ込んだ。 身体全体で呼吸をするように、大きく胸を上下させながら酸素を取り込む。 「まぁ、だらしないわねぇ」 筋肉質で屈強な体躯のレッスンプロ…
「オイお前!なんでいっつもいっつもウチの邪魔ばっかすんのや!!」 長い髪を頭の後ろでおだんごにした少女が、路地裏で怒鳴っている。 おだんごから垂れた、まとめきれない黒髪の束を揺らしながら地団駄じだんだを踏む。 「えっ・・・アタシは邪魔なんて・…
下記の話の続きです。 1.キャラクターとショートストーリー 2.【上】それぞれのプロローグ 3.【中】それぞれのプロローグ 4.【下】それぞれのプロローグ 5.【前】それぞれの入国 6.【後】それぞれの入国 7.集結の園へ 8.心よ原始に戻れ 9.Beautiful World 10…
「君たちを3人組のユニットとして計算し直してみよう」 テイチョスは額に人差し指を当て、しばらく目を閉じた。 一体何の計算なのか誰にも分からない。 「あ、あの・・・テイチョス、さん?」 ひとこが声を掛けたタイミングでテイチョスの目がパチッと開い…