GWを控えたある日

■学園の近所にある焼肉店『ゲンゴロウ

 

ガラガラガラッ

 

「へいらっしゃ・・・おう! ヒナぼう、おかえりィ!」

 

「ただいまぁ~」

 

「あぁ~待て待てヒナ坊、今ちょうどお客さん居ねぇんだ」

 

「みたいだねぇ」

 

「先にここで晩飯食ってくれると助かるんだが」

 

「そっか。うん、分かった。今日は何?」

 

トリトンカレーで良いか?」

 

「うん。ありがと。あ、でも普通のだと量が多いからハーフサイz・・・」

 

「へいお待ちッ!」

 

ドンッ

 

「・・・ハーフ・・・サイズで・・・。ま、いっか。いただきまーす」

 

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「で、どうなんだ学校は」

 

「ん~、別に普通だけど」

 

「お前ももう3年生だろ?彼氏の1人や2人、連れて来たって良いんだぜ?」

 

「ッ! げほっげほっ・・・な、ナニ言い出すの急に!」

 

「やっぱ、居ねぇのか、彼氏」

 

「なんで突然そんなこと聞くの!?」

 

「いやぁ、お前を引き取ってすぐ母ちゃんが死んじまって、俺らオイラが男手ひとつでお前を育てて来たが・・・すまねぇなぁ・・・」

 

「だからどしたの!? 義父とうさん変だよ!?」

 

「今日テレビでな、高校生にもなったら惚れた腫れたの色恋沙汰なんざぁ当たり前のことだって言っててな。俺らオイラぁヒナ坊はまだガキんちょだって思ってたモンで気にもしてなかったが、よくよく考えりゃ、お前もそろそろイイ歳だなと思ってよ」

 

「そ、そんなの人それぞれでしょ!」

 

「いやいや、ガサツで男勝りで、色気なんてコレっぽちも無ぇ残念な女に育てちまった俺らオイラが悪ィんだ。すまねぇなぁ・・・」

 

「ちょっと!サラッとヒドイこと言わないでよ! あ、あたしにだって彼氏くらい居るんだからね!」

 

「ほ、本当かッ!?」

 

「そうだよ! 次の連休は、そ、その彼氏とうさぽんランド行くんだから!」

 

「そうかぁ・・・良かった、良かった・・・よし、今度そいつを店に連れて来い!」

 

「えっ・・・」

 

ゲンゴロウ特製のボリューム爆弾スタミナ定食をお見舞いしてやろう!」

 

(うわぁ・・・どうしよう。つい勢いで彼氏居るなんて言っちゃったぁ・・・)

 

 

 

■うさぽんランド

 

(ふふふ、このカミューネちゃんの情報網を舐めてもらっては困ります。クォ先輩がうさぽんランドに行くというスケジュールはすでに確認済みなんだから!)

 

(とは言え、3年生のグループに自然に入り込むのはさすがに難しい・・・やっぱりここは偶然を装って園内でバッタリ出会うのが最良ね!)

 

(出会ってしまえばあとは「友達とはぐれちゃって」「一緒に回って良いですか?」「ポップコーン大きすぎて私一人じゃ食べられなくて」みたいな感じで!)

 

(あとはどうやって二人きりになるか・・・絶叫系は絶対乗れないし、いきなり観覧車はさすがにハードルが高い、と言うかラミリア先輩がきっと妨害してくるだろうし)

 

(やっぱりここはお化け屋敷ね。きっとクォ先輩たちは中等部と小等部のちびっこ達を連れてくるし、きっとあのラシェって子は入りたがらない。そしたらラミリア先輩は外で待っててもらってクォ先輩と私だけで入るのも不自然じゃない)

 

(よぉし!そうと決まれば下見よカミューネ!いざ当日に本気で怖がってクォ先輩にくっつく余裕が無いなんてオチはご免だわ!1回行って慣れとけば「キャー!こわーい!ぎゅうっ」の場所とタイミングも掴めるし)

 

「学生1枚。はい、じゃあこれで」

 

「お化け屋敷は・・・ああ、あっちね」

 

「あんまり本格的って感じでも無さそう。子供だましかな?」

 

スタスタスタ

 

「ん~、やっぱりそんなに怖く無いなぁ。これじゃ逆に怖がる方が不自然かも・・・」

 

「どこかでびっくりポイントがあれば良いんだけどなぁ」

 

カサッ・・・ビロロロ~ン

 

「・・・?」

 

「・・・ッ!!!?」

 

「ちょ・・・いやあああぁぁぁッ」

 

「こ、来ないでぇぇぇ!!!」

 

「何で!?なんでついてくるの!?」

 

「誰か助けてぇぇぇぇーっっっ!!!」

 

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