国の説明とメインキャラ

国名:KIS U BIT キスビット

 

■国の成り立ち

四方を海に囲まれた島国、キスビット。

古の文献によれば、偉大なる土壌神ビットが海底の泥から創造したとされるこの国は、全国民がその神の末裔であるという思想に支えられていた。

国名の由来も「あなたにビットの加護がありますように」という意味である「キス ユー ビット」である。

しかし時は流れ、航海技術の進歩によって海外との交流が始まった。

血は混じり、信仰は薄れ、文化は変遷し、そしてビット神話を知る者も減ってしまった。

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■北部「マカ アイマス MAKA AIMS」

国の北部を東西に走る「ウーゴハック山脈」は、今や少数派となってしまった純血のキスビット人が住む「マカ アイマス山地」を護る天然の要害だ。

海側は断崖絶壁となっており、船を停泊させることはもとより、上陸など到底できるものではない。

キスビット人は古くからのビット信仰により、土を操る魔法に長けている。

彼らは人間からの迫害によって北部に閉じ込められているが、その現状に不満は無い。

これ以上の侵攻が無いのであれば、北の山地で存えることも悪くない。

彼らは土と共に生きるのだ。

 

■最大都市「エイ マヨーカ A MAYOKA」

ウーゴハック山脈に降り注ぐ雨は三本の大きな河川となり、キスビットの国土を潤している。

まるで国を二分するかのように、島の中央を南北に走る「エイアズ ハイ川」が育む豊かな土壌を基盤に繁栄しているのは、この国最大の都市「エイ マヨーカ王都」である。

キスビットは王制を敷いているわけではないが、エイ マヨーカのあまりの繁栄ぶりに、いつしか人々は統治する首長を「王」と呼ぶようになった。

王都にキスビット人は公式上、存在しない。

また人間以外の種族もほとんど住んでいない。

初代エイ マヨーカの王である「ゴーネン王」が敷いた人間至上主義が現在まで脈々と受け継がれ、他種族に対する侮蔑と嫌悪が当然の常識としてまかり通っているのだ。

外国との外交はエイ マヨーカの現王「オイロム」とその側近が、キスビットの代表として執り行っている。

オイロムはキスビット全域から人間以外の種族を排除し、国名をエイ マヨーカに改名しようと目論んでいる。

それを快く思っていないのが、エイ マヨーカの西に位置する第二の都市「ラッシュ ア キキ」並びに、東に位置する第三の都市「ジネ」である。

 

■第二の都市「ラッシュ ア キキ RUSH A KIKI」

「アハタクス ハイ川」を水源として栄えたラッシュ ア キキは、エイ マヨーカを追われたアスラーン達によって拓かれた。

彼らは人間に対抗すべく勢力を拡大し、キスビット第二の都市にまで成長した。

とは言え、ラッシュ ア キキの市長であるアスラーンの「オッティ」によれば、人口、技術力、経済など、エイ マヨーカの規模には遠く及ばず、今は虎視眈々と力を蓄えている状態である。

人間と同じく、キスビットという国にとってみればアスラーン達も渡来者であり、それは逆にラッシュ ア キキに住むアスラーン達にとってキスビットという国が重要でないことも示している。

彼らを支えるのは愛国心ではなく、人間への敵対心である。

 

■奴隷都市「ジネ ZINEB」

「イオシィ ハイ川」の河口に広がる平野部の都市ジネには鬼が住んでいる。

ジネの総人口の約30%が鬼であり、他は他種族(人間以外)、特にアルビダが大半を占めている。

ジネの総代である鬼の「リョムイシャ」は自らの同胞が人間から受けた迫害をそのまま他種族へ転嫁し、キスビット内で唯一、奴隷制度を敷いている。

鬼を頂点とする階層的な種族差別によって形成されるピラミッド、その最下層に位置するアルビダたちの扱いは凄惨である。

だが他の都市が彼らを助けることは無い。

エイ マヨーカは人間以外の種族を受け入れることはなく、ラッシュ ア キキもアスラーン以外は受け入れず、市外亡命は困難だ。

また個の戦闘力が極めて高い鬼への抵抗は考えられず、奴隷身分の種族は生まれたことを呪う日々を送る。

 

■新勢力「タミューサ TAMYUSA」

このように、現キスビットでは種族主義の根が蔓延しており、お互いがお互いを憎み、嫌悪し、ともすれば寝首を掻いてやろうという状況である。

 

ただ唯一、全ての人種が入り混じって暮らす村「タミューサ」だけは例外だった。

エイ マヨーカの北部、国のほぼ中央に位置するタミューサ村は、キスビットに存在する全ての種族が折り合いを付けて暮らしていた。

もちろん、長年いがみ合ってきた他種族同士、とても「仲良く」とは言い難いものの、それでも大きな問題も起こさずに静かに暮らしている。

これはこの村の頭首である人間の威光が大きい。

彼はキスビットの現状を憂い、誰もが平和に暮らせる国を作ろうと立ち上がった。

幾人かの協力者を得て村を拓き、ものの数年で小都市レベルの規模にまで成長させたのだ。

他の三都市も無視できないレベルにまで大きくなったタミューサは今、キスビットの行方を左右し兼ねないほどの存在となったのだ。

 

■入国について

キスビットに入国するには4つの方法がある。

まず最大都市であるエイ マヨーカの港へ入港し、入国審査を受ける方法。

人間であれば2~3の簡単な質問だけでまず間違いなく入国できる。

アルファは作業用機械として振舞う場合、同行を許可されるケースが多い。

その他の種族の場合、多額の賄賂を役人に渡し、1~2週間程度を停泊中の船内で待たされたのち、運が良ければ入国できる。

また、もし入国できた場合であっても都市の中心部には入れず、宿屋への宿泊や物の購入も拒まれる場合が多い。

人間以外の種族には、あまりお勧めしない入国方法だ。

 

次は第二の都市であるラッシュ ア キキの港へ入稿し、入国審査を受ける方法。

どの種族であっても厳しい審査が課せられる。

仮に審査を通過しても、武器防具の類は携行できず、港湾防衛軍の預かりとなる。

鬼であれば枷の着用が義務付けられ、妖怪や精霊は魔法や術が使用できないように特殊な符を装着される。

これらの枷や符はキスビット国からの貸与物であり、所有権はキスビットにある。

もちろん本来の管理管轄はラッシュ ア キキであり、所有権をキスビットとしているのは諸外国に対する体裁を保つために過ぎない。

それらの貸与物を無断で外したり破壊したり紛失したりすると、相応の罰則が待っている。

アクシデントの可能性などまるでない物見遊山でない限り、ここからの入国はあまりお勧めではない。

 

次はジネからの入国。

鬼であれば無条件で入国できる。

その際、もし他種族の仲間が同行する場合、それら全てを自身の奴隷という扱いにせねばならない。

もちろん奴隷がまともな衣類や装飾品などを身に付けているのはオカシイので、それ相応の身なりにならねば関係を疑われてしまう。

もし鬼であるにも関わらず他種族と友好的な関係を築いていることが判明した場合、中央憲兵による連行、監禁、洗脳が行われ、立派な差別主義鬼に生まれ変わることができる。

入国希望者が鬼以外の種族であった場合、即座に奴隷登録を執行される。

また、入国者が人間だった場合は有無を言わさず殴殺される。

鬼以外の種族には、あまりお勧めできない入国方法だ。

 

最後に、タミューサの村民と連携して密入国する方法。

国の北側以外は上陸が可能な海岸も多く、また三大都市勢力圏外となる場所もまだ方々に存在する。

キスビット周辺の海域で漁をしている漁船の中から、運良くタミューサ村の船を発見することが出来れば、平和的な入国ができるだろう。

 

■episod0

 

最初の記憶は、火薬と金属と汗の匂い。

そして官憲が荒々しく突入してくる騒音。

連れ去られる父と母。

僕は地下室に、キスビットの子供と一緒に居た。

酷く怯えている。

夜になって、僕たちは地下室を出た。

でも官憲達はずっと見張っていたんだ。

すぐに捕まってしまった。

ひどく殴られ、蹴られた。

キスビットの子は大丈夫だろうか。

血の匂いがする。

体中が痛くて、思うように動けない。

急に、とても懐かしい匂いがした。

頼れる、信じられる、安心できる匂い。

土の匂いだ。

僕は、死ぬのだろうか。

 

少年が幼心に死を意識したその刹那、官憲の足元の石畳が突然爆ぜた。

更に奇怪なことに、巻き上がった土は倒れた官憲たちに降り積もり、固まってしまった。

ジタバタともがくことしかできない官憲たち、その側に倒れている少年二人を担ぎあげて風のように走り去る人影ひとつ。

身にまとう装束と尖った耳から、キスビット人であることが窺える。

彼は一目散に市外へと走った。

都市の周囲を強固な壁で覆われた王都エイ マヨーカ。

もし脱出するのなら街道を進み関を越えなければならない。

しかしキスビット人はあろうことか壁に向かって走り続ける。

このままでは行き止まりになってしまうことは明白なのに。

壁が近くなるにつれ、彼の視線は壁の頂上に近づいた。

いつの間にか足元の土が盛りあがり、壁の頂点へと続くゆるやかな坂道を形作っていたのだった。

彼が壁の上に立つと同時に、土のスロープはボロボロと崩れ去り、ただの平地になってしまった。

 

次の記憶は木の実のスープの匂い。

僕は全身の痛みで目を覚ました。

体中に見たことの無い葉っぱが貼られている。

ゆっくりと上半身を起こすと、おでこから湿った布が落ちた。

お腹がぐうと鳴り、なぜだか恥ずかしかった。

大人のキスビット人が、テントに入ってきた。

そして僕に、お礼を言った。

 

「ありがとう。本当に、ありがとう」

 

シルファンは?どこにいるの?」

 

僕はキスビットの子がどこに居るのか聞いた。

お父さんとお母さんに言われたんだ。

この子を守ってあげて、と。

 

「・・・シルファンは、ビットの元へ還ったよ・・・」

 

意味は分からなかったけど、悲しい匂いがした。

この人が、とても悲しんでいることが分かった。

 

人間という種族はやたらと体裁を気にする。

子供の一人や二人に逃げられたからと言って大勢に何の影響があろうか。

しかし彼らの行動原理の一翼を担う“メンツ”というものが、彼らを突き動かすのだ。

あの日、土に固められた官憲は壁外警護兵を数人引き連れ、後を追ってきたのだ。

単筒式の遠眼鏡でキスビットのテントを確認する。

これ以上に北上されてしまえばもう完全な領外となり、追跡を諦めねばならなくなる。

いまここで、決行せねばならなかった。

壁外警護兵に合図を送り、弩(いしゆみ)を準備させる。

大型のクインクレインクロスボウに火薬爆弾を仕込んだ槍をセットする。

直撃しなくとも、数メートルの距離に落ちれば致命傷を与えることが出来る兵器だ。

風を読み、射角を決め、爆弾槍は放たれた。

 

「おじさんは、シルファンの、お父さん?」

 

僕が尋ねると、キスビットの男の人は静かに頷いた。

急に、悲しみの塊がお腹から胸に上がってきて、僕は泣きだした。

 

「おじさん、ごめんね、ごめんね・・・」

 

お父さんとお母さんが助けようとした。

僕が守らなきゃいけなかった。

おじさんの大事な娘。

おじさんは、僕を抱きしめてくれた。

本当は、もっと早く気付けたはずだった。

こんなにも泣いていなければ。

火薬と、鉄の匂い。

耳を突き破るような爆発音。

 

大量の砂埃を巻き上げ、テントを吹き飛ばした爆風は、石の礫をしたたかに撒き散らした。

キスビットの男が人間の少年を抱きしめたのは、この爆発から守るためだったのだ。

彼の背中には無数の穴が穿たれ、一目で致命的な傷であることが分かる。

官憲は喜び勇んで駆け出した。

 

「おじさん!おじさん!」

 

少年は、自分を抱いたまま動かなくなった男に何度も呼びかける。

 

「残念だったなぁクソガキ!散々手間かけさせやがって!」

 

少年の目に怒りと憎しみの炎が宿る。

 

「・・・してやる・・・殺してやる、殺してやる!」

 

呪いの言葉も虚しく、少年は怪我の痛みで立ち上がるのが精いっぱいだった。

 

「そんな体で何ができる?はん!大人しく連行されろ!」

 

そのとき、キスビットの男の体がぐらりと揺れ、立ち上がった。

いや、立ち上がったように見えた。

実際には周囲の土が彼にまとわりつき、人型を形成しているのだった。

 

「ゴ、ゴーレム・・・?」

 

絶望的な恐怖の言葉を漏らし、壁外警護兵たちは王都へ逃げ帰る。

どんな爆弾でも、どんな兵器でも、倒すことはおろか傷を付けることすら困難なキスビットの悪魔、ゴーレム。

人間にはそのように伝承されている。

ゴーレムはずずずと音を立て、一歩、官憲に近づいた。

 

「ひ、ひぃぃぃぃーッ!!!」

 

警護兵に遅れて官憲も、王都へ向かって走り出した。

少年は叫ぶ。

 

「待て!殺してやる!殺してやる!」

 

スン、と、芳ばしい匂いで目が覚めた。

どうやら居眠りをしていたらしい。

子供の頃の夢など、久しく見ていなかった。

この香りは、焼きたてのパンと、ああ、木の実のスープだ。

きっとこの匂いのせいであんな夢を見たのだろう。

 

「昼食の準備ができましたよ、エウス村長」

 

「ああ、ありがとう」

 

あのあと、キスビットの彼は幼い私に言った。

瀕死の状態で、最後の言葉を。

 

「こんな姿じゃ、シルファンに、会えないな・・・」

 

後で知ったことだが、キスビット人は土属性の魔法を使う。

能力には個人差があるが、才能のあるものにだけ使える禁呪があるそうだ。

自分の命と引き換えに、土壌神ビットの偉力を身にまとい、ゴーレムとなって戦う。

その力は凄まじく、武装した人間の大隊にも劣らない。

残りの寿命を圧縮して作りだす無敵の活動時間が終われば、さらさらと砂になって消えてしまうのだ。

しかしキスビットの民はこの力を使わない。

なぜなら、ゴーレムになった者は死を迎えられないと考えられているからだ。

無数の砂粒になり、風に舞い、この世に在り続ける。

魂はビットのもとに行けず、先に逝った仲間や先祖にも会えないのだ。

しかし、それをしてまで守ってくれた私の命。

私は人間だが、キスビット人に守られ、育てられた。

この命は、キスビットという国の為に、使いたいのだ。

世界の中でも例を見ない程、種族同士の関係性が悪いこの国。

どうすれば良いのかなんて、今は分からない。

それでも、何が正しいのかは分かる。

父と母の教えが、今も私の中に生きているからだ。

 

 

◇名前

【エウスオーファン】

タミューサ村を拓き、仲間を集め、種族差別の無い集団の礎を作った男。

◇種族

【人間】

◇特化能力

【嗅覚】

◇年齢

【56歳】

◇特技

【短刀投擲】

◇性格

【のんびり、柔和、隠れ激情家】