新生キスビット
エコニィとラニッツが交際を始め、数カ月が経過していた。 ラニッツが一人暮らしをしていた家にエコニィが転がり込むかたちで、同棲をしている。 二人の仲睦まじい関係は村でも評判であり、結婚も間近ではと囁かれていた。 「よぉ! エコニィちゃん、今日も…
キスビットに生息する生物は、大きく分けて二通りです。 愛玩用や家畜として、民の生活に深く関わり、その生態の詳細が解明されているものと、飼育や調教が不可能だとされる野性の動物です。 前者はごく普通に『動物』と呼ばれ、後者は『魔獣』と呼ばれます…
焚火の中で小枝がパチパチと立てる音。 川のせせらぎ。 少し離れた草むらからは虫の声。 そして隣から聞こえてくるエコニィの呼吸。 元々アスラーンは夜行性であり、夜になったから寝るというような習慣は無い。 疲労回復の為、必要な時に最低限の仮眠を取る…
今回の物語を始める前に、本作に関わるキスビットの状態と登場人物の状況について簡単に説明させてください。 まず始めに、ざっくりと上図の流れをご確認ください。 1.種族間の差別意識が極端だった異常社会を問題視したエウスオーファンらが 2.その根本原因…
私たちは、ひょんなことから潜入捜査を行うことになりました。 かつて私たちの国、キスビットを救うために死力を尽くしてくださったカウンチュドさんからの依頼とあれば、断ることなんてできません。 しかも、邪神ビットが関わっているかもしれない怪事件と…
「ねぇお母さん、何してるの?」 「ケーキを作ってるんだよ」 「わぁ! 今日、誰かのお誕生日なの?」 「そうだね」 「お父さんじゃないよね?」 「違うね」 「お母さんも違うよね?」 「違うね」 「アワキアでもオイラでもないよね?」 「エオアもアワキア…
沿玉で開催されている鬼祭り、その会場のキスビットコーナーの裏手で一人の鬼が項垂うなだれて座っていた。 名を、エビシと言う。 彼は特に器用な方では無く、このようなイベントにはあまり向いていない。 それなのにこの会場ではキスビットの広報活動をする…
「本日は我がキスビットの、鬼にまつわる体験コーナーにお越しいただきまして誠にありがとうございます!ワタクシ、キスビットの真ん中にある村、タミューサから参りました、外交使節および広報担当のエビシと申します。これを機に皆様方が少しでも、我がキ…
キスビットは土壌信仰の精霊たちから端を発した国である。 キスビット人と呼ばれる彼らは例外無く土壌神ビットを信仰しており、土属性の加護を授かっている。 能力に個人差はあるが、大抵のキスビット人は土や石などを自在に操ることができるのだ。 そんな彼…
【00】怪盗チャイ ~哀しみの行方~【新生キスビット】 【01】怪盗チャイ ~哀しみの行方~【新生キスビット】 【02】怪盗チャイ ~哀しみの行方~【新生キスビット】 【03】怪盗チャイ ~哀しみの行方~【新生キスビット】 【04】怪盗チャイ ~哀しみの行方…
【00】怪盗チャイ ~哀しみの行方~【新生キスビット】 【01】怪盗チャイ ~哀しみの行方~【新生キスビット】 【02】怪盗チャイ ~哀しみの行方~【新生キスビット】 【03】怪盗チャイ ~哀しみの行方~【新生キスビット】 「おい!待てよチャイ!どこに行…
「痛ッ・・・」 「どっ、どうした!?」 「いえ、大丈夫です。すみません」 「おいおい、変な気遣いはよしてくれ。私は君の夫だぞ?」 「・・・そ、そうですね・・・えっと、履き慣れない靴で足が痛くって」 「なんだ。そんなことか」 「つまらないことで止めてしまっ…
激動の激闘を経てキスビットから種族差別が消え去り、ルビネルの活躍によってアウレイスが生還を果たしてから数日。 タミューサ村では平和な時間が流れていた。 自室で書きものをしていたエウスオーファンのところに来客があったのは、早朝のことだった。 「…
↑時系列としてはこれの続きです。 「ボク・・・ハロウィン好きじゃない・・・」 カボチャの被りモノをゴロリと床に転がして、オジュサが言った。 その瞳には光が無く、『ジャック・オー・ランタン』という名称を耳にしたときの輝きはすっかり失われてしまっていた…
『続いて、喜ばしくも不可解なニュースです。先日ハーレイハビサ美術館から盗まれた【ミーアの翼】が無傷で帰還したとのことです。当局による情報開示は無く、詳細は不明ということで、何とも腑に落ちない事件でした。ともあれ無事に・・・』 プツン。 視るとも…
「この度はチャイ逮捕へのご協力、感謝致します。ですがご覧の通り・・・面目ありません」 チャイの同級生という男に頭を下げているのは、国際警察の警部、ケサーナである。 ハーレイハビサ美術館に展示されていた『ミーアの翼』を創作した張本人の芸術家が、子…
ここは、キスビット国の南西部に位置する都市、ラッシュ ア キキ。 この街は人口のほぼすべてをアスラーンが占めている。 町のお食事処。 食堂の天井付近には大きめのモニタが設置され、ニュース番組が流れている。 誰でも気軽に入れる、というわけでは無い…
無機質な機械類に囲まれた部屋。 壁面がほぼ見えないほど、何かの装置や図面などが所狭しと置かれている。 天井が全体的に発光しているため暗いということは無いが、このような発光体を他で見かけることはない。 一体どのようなテクノロジーが使用されている…
「という訳で、私は暫しばしグランピレパに行かねばならん。観光客の増えるこの時期、村に居られないのは後ろ髪惹かれる思いだが・・・」 ここはエウスオーファンの家、つまり村長邸である。 キスビット国のほぼ中央に位置するこのタミューサ村で、村長のエウス…
ガチャ。 「と・・・とりっ・・・Trickトリック orオア Treatトリート、ですっ!」 ノックされたからドアを開けた。 恐らくはお菓子目当ての子供だろうとタカをくくって、開けた。 だが視界に飛び込んできたのは、明らかに大人サイズの布オバケだった。 「その声は…
ボクの村には海が無い! プールを造ったんだよ! しまった!水着を忘れてた! バタフライエフェクトッ! ウォーターフロントスーパーサマージェットスライダーグレートプール『キスビットピア』 ボクの村には海が無い! 淡い金髪を撫でる風が、とても不愉快…
カミューネは、危険なツノの消失が戦闘終了の合図だと知って安心した。 ふわりと頬を撫でる風の中、キスビット特有の簡素な衣装が緩やかに揺れる。 金弧の頭をそっと離したカミューネ。 「私、いままですごく狭い世界で生きてたんだなって、改めて思い知りま…
「こ・・・ここはドコ?拙者は金色こんじきの電弧アークでござるよ?」 意識が混濁しているらしく発言が意味不明である。 しかしカミューネにとっては命の恩人的な状況だ。 ようやく頭がハッキリしてきた金弧の前で泣き出したカミューネ。 「金弧さんッ・・…
「今日もよく飛んだな」 巨岩のような体躯の忌刃が、はるか遠方の空を見ながら呟く。 その手には『いけないアイドル紫電ちゃん』と書かれた薄い本が握られている。 「マジで懲りねぇなアイツ!なんっべん言わせんだド畜生め!」 怒り心頭の紫電がドカドカと…